~ジビエカー~ 食肉利活用に向けた“切り札”
「ジビエカー(移動式解体処理車)」は日本ジビエ振興協会、長野トヨタ自動車(株)が共同開発した野生獣を現地で※1次処理する事のできる特装車です。
捕獲現場付近まで駆けつけてから止め刺しを行い、直ちに処理を行うことが出来るので、肉の劣化を抑えることができ、また、近隣に獣肉処理施設のない地域や運搬の手間かかる地域などでのこれまで廃棄されていた鹿、猪の利活用率向上が期待されます。
2015年に計画がスタートし、2016年7月末に完成。同年8月から実運用に向けた実証実験を行いました。
最大の特徴は、車内で1次処理(内蔵摘出~剥皮~解体)を衛生的に行うことができる点です。捕獲された地点へ近接し、素早い処理をすることが可能なため、より良質な食肉利用が可能になると期待されています。また、運搬の手間・時間を軽減できるために、廃棄率を低減・利用率の向上にも繋がります。このような効率的な捕獲・利活用のサイクルを回し、有害鳥獣駆除が“ビジネス”として成立するようになれば、自然保護、農林業保護が人間の生活を支える“エコシステム”が成立するに違いありません。
※1次処理(洗浄・剥皮・内臓摘出)
[スペック]
トヨタ ダイナ
車長=6457mm/車高=2911mm/車幅=1940mm
[特徴]
- 徹底した衛生管理の実現
(1)野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)に基づく設備
①83℃の温湯機器を装備
②洗浄から冷蔵保管まで床に触れない懸吊設備を装備
③と畜場法施行規則第3条を参考に製作
・床面には器具、機材を置かない設計
・換気装置を設置
・冷蔵庫は5℃以下に設定
・泥で汚れた個体は、吊した状態で室外で洗浄
・汚物は密閉容器に入れて保管
・消毒は、83℃の温湯設備を利用
・手洗い設備の設置
④洗浄と水洗いができる2槽シンクを装備
(2)車特有の対策
①作業者の履き物・衣類は、庫内に収納庫を設置
②専用のトレイにより、解体した汚物の床面への飛散を防止
③電解次亜塩素酸ナトリウム水による個体の殺菌消毒、洗浄
④交差汚染防止を図るため、作業室と冷蔵室の間に前室を設置 - 独自の設備
(1)発電機を搭載(設備の運用を賄う)
(2)高圧蒸気滅菌器
(3)水道水用タンク(600L)
(4)排水タンク(現場で出た汚水を全て受け容れる)
(5)汚物容器(内蔵、皮などを収納する密閉容器を搭載)
(6)各室間の自動ドア
(7)エアーによる個体の清掃