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全国調理師養成施設協会加盟校の先生方にジビエセミナーを開催

2022年01月17日

全国調理師養成施設協会(東京都渋谷区。以下、全調協)向けのセミナーが1月9日、東京代々木の学校法人服部学園で行われ、全国に約280ある養成施設のうち関東エリア12校の先生、講師約75名の皆様にご参加いただきました。

調理師、料理人を養成する学校の先生方にジビエについてお伝えすることは、近年日本ジビエ振興協会(以下、ジビエ協)にとっても課題のひとつとなっていました。弊協会代表理事の藤木は冒頭のご挨拶で次のように話しています。

「専門学校などで学んで修行した後、独立して地方へ行ったり戻ったりした若い料理人が直面するのがジビエ。地元の農家さん、猟師の方、または商工会や行政の方から、『鹿、イノシシを使ってくれ』と言われることが多いのですが、扱い方を知らずに悩む料理人が多いようです」(藤木)

ジビエ協が求めに応じて開催する講習会・セミナーに参加されるのは、すでにお店を構えている方がほとんど。学校にいるうちにジビエを学ぶ機会を設けることができれば、料理人の負担も減らせるうえ、地方へも貢献しやすくなるのではないでしょうか。

全調協会長である服部幸應氏も挨拶に立ち、次のように述べています。

「日本ではまだまだジビエを上手に扱える料理人が少なく、美味しいジビエ料理に出会うことも多くはなかったように思います。要は火の入れ方ですが、そこを学ぶ機会がないのかもしれません。今日は学校で教える先生方にジビエの扱い方を知ってほしいし、これを機に学校でもジビエを教えることを検討してほしいと思います」(服部氏)

また、卒業生へのフォローとして講習会・セミナーなどを開催することも協会として検討したいと話しています。

農林水産省農村振興局農村政策部長の山口靖氏も、冒頭挨拶で今後のジビエの市場拡大にむけて、ジビエを扱える料理人を増やすことは必須であるとし、先生方への期待を述べています。

 

先生方からもご好評いただいたセミナー

講習は「国産ジビエ利活用に関する概況」(藤木)、「ジビエの衛生」「ジビエの栄養」(ともに東京家政学院大学・上薗薫准教授)で基本的な知識をお伝えした後、「ジビエの各部位の特徴と調理法」として、解体と調理を実演しました。会場となった服部学園の講義室は、カメラやモニターの設備が充実しており、手元の細かな作業も、参加者の皆様にも詳細にお伝えすることができました。

上薗先生の講義の様子
解体講習の様子

講義の最後の質疑応答でも熱心にご質問いただき、先生方のジビエへの興味関心の高さが感じられました。

閉会にあたり、服部氏が再び挨拶に立ち、「今後は大変だと思う」と、先生方に呼びかけました。

「日本ではおそらく10kgを超える肉をさばいたことのある方は少ないのではないか。学生の前でやるとなると大変なことになるでしょう。フランスのシェフはさばくことも料理の一部として、日々ジビエはもちろんさまざまな肉を解体処理しているが、そこまで行かないとダメだと思います。ジビエの普及は、これからの料理人の取り組むべきことのひとつ。ぜひ使命感を持って、教える体制を作っていってほしいと思います」

会場では先生方に試食もしていただきました。(鹿ロースのポワレ、鹿肉の唐揚げ、鹿骨スープ、猪スネ肉とバナナのタルト)

 

全調協としても、ジビエ普及のため、各ブロックで同様のセミナーを開催していくことを検討してくれています。まずは教え手にジビエを広めることで、玉突き的にジビエの使い手が増えていくことが期待されます。

この日受講した先生方に感想を聞くと「良い講習だった」と概ね好評をいただきました。ある方は、「現場で修行した若いころを思い出した」と話しています。

「昔はジビエを扱うこともちらほらあり、先輩から捌き方や生命の大切さを教えられたことを思い出しました。今も生徒たちに日々料理は生命をいただくことだと教えてはいますが、なかなかストレートに教えられることも少ないのが現状。今日は料理の本質、原点を思い出させてもらった気がします」

また、別の参加者は授業でジビエを扱いたいが、現実的に難しいのではないかとも。

「鹿となると流通量も少なく、運搬も難しいことも分かりました。実際教材として使うにはハードルがある。流通やロットの問題を全調協、ジビエ協のほうで解決してもらえれば、扱える幅が広がるのでは」

ご指摘の通り、まだまだジビエの流通には課題があり、教材として扱う難しさもあります。しかし、ジビエ協としても、先生方にジビエについてお伝えできたことは大きな一歩となりました。今後も引き続き全調協、全国の先生方とともに、ジビエ振興・普及を進めて参りたいと思います。