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FOODEX JAPAN 2026 レポート ジビエの新たな展開と課題

2026年03月20日

3月10日(火)~13日(金)に開催されたFOODEX JAPAN 2026に、弊会も協力および出展いたしました。弊会からの呼びかけで、「全国食品博」のエリアで3施設にご出展いただいたほか、ステージイベントのプロデュースにも協力。3日間で7万人超の来場者に向けて、ジビエのアピールをしてまいりました。

ジビエ展示の変化

今年は、昨年までの「ジビエ利活用・鳥獣被害対策展」が廃止され、ジビエ関連の出展は「全国食品博」のエリアにほぼ集約されました。弊会からの呼びかけでご出展いただいたのは

  • おおさきジビエコンソーシアム(宮城県大崎市)
  • いしかわジビエ利用促進研究会(ジビエアトリエ加賀国も参加)
  • 大幸(鹿児島県出水市)

の3施設でした。大幸、おおさきジビエでは試食もご提供いただきました。

ジビエの注目度は昨年よりも上がり、足を止めるバイヤー、飲食店の方も昨年よりも多かった印象です。熊、アナグマの問い合わせもあり、ポピュラーな鹿、イノシシ以外の需要の高まりも感じられました。「すでにジビエは使っている」「使ったことがある」という飲食店の方も多く、価格、量などの具体的なお話をされているケースもありました。各施設とも商談につながるコミュニケーションができていたようです。

ある飲食店の方に伺うと、「自治体の名前が出ていると安心できる、わかりやすい」というコメントも。ほか、やはり値段がネックになるようで、客単価の低い飲食店は二の足を踏み、高級飲食店は値段をあまり気にしない傾向もはっきりと伺えました。

また、同エリアには、弊会関連以外に北海道を中心に5団体の出展が見られました。

 

セミナープログラム

3月12日のジビエ関連のセミナーは、弊会から演者をご紹介してセットされたものになります。

ひとつは、女子栄養大学栄養学部教授の上西一弘氏による「ジビエ摂取の健康効果について」。上西教授はアスリートの栄養学の研究のなかでジビエに着目。低脂肪、低カロリー、高い栄養価というジビエの特徴を解説し、なかでも豊富なビタミン類、BCAA、カルニチン、カルノシン、亜鉛などがアスリートに有用であると評価しています。また、こうした栄養的な評価を「成分分析表」に記載することが重要だと上西教授は話しています。

「私たち栄養学をやってるものとしては、食品成分表にきちっとジビエを掲載していくことが大事ではないかと考えます。それによってジビエの利用価値がますます広がっていくことが期待できるでしょう」(上西教授)

現在の成分分析表には、「シカ」「エゾジカ」「イノシシ」というざっくりとした記載のみで、牛や豚のように部位や加工品などの詳細な内容はありません。現実的には、地域や季節によって大きく栄養価も異なるため何を基準とするのか、大変な難しさがあります。しかし、今後のジビエ振興を進めるうえで重要な方向性を示していただいたのではないでしょうか。

もうひとつのセミナーは、宮城県大崎市産業経済部・世界農業遺産推進監の安部祐輝氏が「世界農業遺産認定地から、東北初のイノシシ食肉『大崎ジビエ』」と題し、同市の取り組みを紹介しました。

大崎市は施設設立以前から地域を巻き込んで、おおさきジビエの普及、ブランディングに取り組んできました。そのスタート時点から弊会もお手伝いしています。ポイントは「地域一体」の体制をいち早く構築していること、また、大崎市「全体」としてブランディング、プロデュースしている点でしょう。大崎市は世界農業遺産認定地であり、ガンが飛来するラムサール条約認定湿地も有しており、そうした豊かな自然と一体になったジビエのブランディングが行われています。

「飲食店、学校給食、鳴子温泉などの観光地といった関連する皆さん全員と一緒になって最初から進めることが大事です。また、ジビエは、米どころとしての田園風景や豊かな自然の風景と切り離せるものではありませんから、これを一体のものとしてブランディングするのが良いのではないでしょうか」(安倍氏)

大崎市は風景やジビエをまとめて映し出すムービーを制作しており、ガストロノミーツーリズムに活用していく予定だと話しています。

日本ジビエ振興協会主催の懇親会

3月12日夜には、FOODEXのVIPラウンジにて、日本ジビエ振興協会主催による業界関係者の懇親会を開催しました。弊会会員の希望者約70名の方にご参加いただきました。

 

懇親会には、自民党ジビエ議連の石破茂会長、伊東良孝議員にご出席、ご挨拶をいただきました。石破会長は幼少のころから地元鳥取でジビエに親しんできた経験があり「美味しいという記憶があるからジビエ議連の会長をやっているのだろう」と話し、次のように今後のジビエへの期待を語りました。

「鹿肉はうまく調理しないと美味しさが発揮されない。そのための機器の開発も進んでいると聞いています。今はまだ利用率が低いですが、熊も鹿も美味しくいただくことで荒れた山を回復させ、野生動物が戻れる自然にしないといけない。人間の食用だけでなくペットフードもあります。利用率を高める余地はまだたくさんあります。ジビエを利用することで良い日本になり、国民の皆さんが幸せになればと考えています」(石破会長)

 

伊東良孝議員は、ジビエ利活用には迅速な処理が必要であること、それをハンターが認識していることが重要だと述べています。

「素早く、適切な血抜きをすること、処理をすることがジビエには不可欠です。ハンターの皆さんにはその認識をお持ちいただき、技量を磨いていただければと思いますし、年々高齢化で減少してくハンターをいかに増やしていくか、それも今後の大きな課題であると認識しています」(伊藤議員)

この他、ジビエ振興活動の紹介として、ロイヤル、秦野市、東洋製罐が登壇し、それぞれの取り組みをプレゼンしていただきましたが、それぞれの活動にもさまざまな示唆がありました。

例えば秦野市は豊かな湧水を持つ「名水の里」としてジビエを訴求していますが、それは弊会が掲げた「GIBIER de 地方創生」のモデルケースのひとつとなるでしょう。日本酒の酒蔵の方も参加しており、ジビエに合う日本酒を開発していると話しました。

また、東洋製罐のジビエの缶詰は、一企業の事業ではなく地方創生のためのスキームであり、自治体、施設とコラボすることでその威力を発揮するものです。実際、東洋製罐のプレゼンを聞いてアプローチしている自治体も見られました。

懇親会の会場では、おおさきジビエ、信州富士見高原ファーム(長野県)、東広島ジビエセンター(広島県)、天草ジビエ(熊本県)、大幸の5施設から肉の提供があり、シンプルに焼いた肉の食べ比べが行われました。ある参加者は「いろいろな施設のジビエを並べて食べる機会はそうそうない。同じシカ、イノシシでも産地によってこんなに違うのかと感動した。ジビエの面白さを感じた」と話していました。また、施設同士でもお互いの肉の違いを認識しあうなど、味の交流ができたようです。

ジビエ展示の意義と課題

今回のFOODEX出展は、弊会としては飲食店関係者、バイヤー向けに強くジビエを訴求する機会になったと考えています。例年以上にジビエブースに足を止める来場者の数は多く、ジビエの盛り上がりを感じさせました。すでに「ジビエを使っている」と離す飲食店関係者もかなりの数見られ、ジビエ振興が新たな段階に入りつつあるという印象です。今後、どのような展示が良いか、通りかかる人にどうアプローチすればよいのかといったことも検討、共有し、より効果的な出展にしていくことが課題となります。どのようなプロモーションやブランディングを仕掛けていくべきなのか、会員の皆さまとともに考えていきたいと思います。